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会社の登記

司法書士は、商業登記に関する手続きの専門家として、 株式会社設立登記・役員変更登記・本店移転登記・資本金増加や減少に関する登記など会社に関する数多くの登記申請の依頼を会社から受託するのはもちろんのこと、企業法務に関するアドバイスを行うなど、コンサルタントとしての役割も期待されています。

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会社法施行により会社独自の定款作成・機関設計が可能に

近年の会社を取り巻く経済情勢の急激な変化に対応し、会社に関する法律である商法が、ここ数年、何度かの一部改正を繰り返してきました。そして、ついに商法や有限会社法などが再編され、「会社法」という形で平成18年5月1日から施行されました。会社法施行により、会社の規則である定款の内容や機関設計において、会社の規模・株主構成・役員の員数・その他個別の事情を考慮して、独自の定め方ができるようになりました。

但し、より柔軟な定めを置くことは、今までのように多くの会社と横並びの定めを置くことの安心感から脱することになりますので、会社自身でより多くのリスクを負担することにも繋がります。
司法書士は、会社法施行以前から、商法及び商業登記に関する手続きの専門家として業務を行ってまいりましたが、会社法施行後は、その役割はより重要になるものと考えております。会社の個別の事情に応じた定款内容や機関設計等のご提案やそれに伴う登記申請につき、司法書士がお手伝いいたします。

電子定款認証・商業登記オンライン申請

株式会社を設立するには、まず定款を作成し、公証人の認証を受けなければなりません。今までは、紙ベースの定款を公証人に提出して認証を受ける方法しかなく、費用として公証人への報酬の他、印紙代4万円が必要でした。しかし、平成19年4月1日より、法務省オンライン申請システムを利用した電子定款認証を行う方法による場合、印紙代4万円の納付が不要となりました。

電子定款認証を行うには、法務省オンライン申請システムを利用する必要がありますが、法務省オンライン申請システムとは商業登記等をオンラインにより行うためのシステムで、商業登記の専門家である司法書士は、その多くがこのシステムに対応しています。

会社についてのQ&A

少ない資本金でも会社設立ができる?

これまでの商法では、原則株式会社の設立で1000万円、有限会社で300万円の資本金を用意しなければなりませんでした。これに対し会社法では、この最低資本金制度が廃止され、少ない資本金でも株式会社を設立することができるようになりました。
これは、最低資本金制度が新規事業創業の足枷となっていたため、新しいビジネスを会社として始めたくても始めることができないといった不都合に応えたことによるものです。

また、株式会社設立の際に必要であった金融機関の払込金保管証明書も募集設立を除いて不要となり、預金通帳の写しなどで足りることとなりました。これにより、払込金保管証明書発行のために必要であった発行手数料も不要になり、設立に要する費用も抑えることができます。 少ない資本金で設立しやすくなるとはいえ、起業には一定の金額が必要ですし、資本金があまりに少額であることは対外的な信用に欠けるともいえます。

また、取引金融機関などの信用を強化するためには正確な計算書類を作成することは不可欠です。

会社の名前が自由に選べる?

これまでの商法では、ひとつの市区町村内で、同業種の会社が同一または類似の商号を登記することはできない旨規定されていました。近所によく似た商号の会社があるときは、あきらめるしかありませんでした。これに対し会社法ではこの規定が無くなりました。その結果、ひとつの市区町村内でも異なる本店であれば、同一・類似商号が登記することができるようになりました。

これは、現在の企業活動がひとつの市区町村内にとどまらず、全国規模で行われる事が多くなってきた事などを考慮したものです。
同一・類似商号が登記できるようになったとはいえ、不正な目的で他社と同一・類似の商号を使った場合は、商号使用の停止に加えて損害賠償請求をうける可能性もあるので、注意が必要です。

取締役が一人でも大丈夫?

これまでの株式会社では、取締役は3名以上監査役1名以上を置かなければならず、人数あわせのために名前だけの役員を置くこともありました。経営判断を行う取締役が、実質一人の株式会社にあっては、不自然な状態であり、また役員報酬の支払い等の必要性もありました。これに対し、会社法では取締役が最低1名いれば取締役会非設置会社として設立できることになりました。

会社法では株式会社に必須なのは株主総会と取締役です。その他取締役会・会計参与・監査役・監査役会・会計監査人・委員会(これらの事を総称して「機関」と呼びます)は一定のルールの下で任意に設置することが可能となりました。それぞれの会社に合った機関設計を選択することにより、より機動的な会社運営を可能にすることができます。

会社にあった定款の見直しをするには?

定款とは、その会社の基本的な規則でありそれを表記したものです。商号、会社の目的、本店所在地などの登記記録に記録される重要事項だけでなく、会社の機関(Q3参照)や業務執行に関すること等、様々な規定を設ける事ができます。会社が、自らその内部規定を定款をもって定め律していくことを「定款による自治」と呼んでいます。会社法では、この定款自治の範囲が拡大され、たとえば、役員の任期や、株主総会等の決議に関する規定、株券に関する規定等を、その会社の実情にあった内容に変えていく事ができる様になりました。

会社法施行の際それまでにあった株式会社は、整備法とよばれる法律により、定款を変更しなくても定款に「取締役会および監査役を置く旨の定めがあるもの」とみなされ、登記簿にも取締役会設置会社、監査役設置会社である旨の登記が自動的に記載されました。

整備法により、会社法施行の際株券を発行しない旨の登記をしていなかった会社は、一律にその定款に株券を発行する旨の規定があるものとみなされ、「当会社の株式については、株券を発行する」との登記がなされています。実際に株券を発行していない会社は、その実情に合うように株券を不発行とする定款変更を検討してはどうでしょうか。詳しい手続きについては司法書士にご相談下さい。

定款で会社の機関設計を見直しする際、会社法の規定による「一定のルール」に従わなければならない場合があります。例えば、会社が定款を変更して譲渡制限のない株式を発行できるようにしようとすると、併せて取締役会や代表取締役に関する規定等も新設、或いは変更する必要が生じてきます。この様な、関連する定款事項の変更、会社機関の組み合わせ方やバランスについても司法書士に一度おたずね下さい。

取締役・監査役を選びなおす手間とコストを削減したい。

これまで株式会社は、原則として取締役は2年ごと、監査役は4年ごとに選び直す必要があり、その都度それらの役員の改選と登記の手続きに手間とコストがかかっていました。そのため、会社法では株式に譲渡制限を設けている会社であること等一定の条件の下に、取締役や監査役の任期を最長で約10年まで伸長することができる様になりました。役員を長期間変更する必要のない会社にとっては、定款で任期の変更を行い、会社の負担軽減をはかることが可能になります。

特に役員任期を10年に伸長した会社は、10年後の改選と変更登記を忘れない様にしなければなりません。その意味であまり長期間の任期設定は、会社の管理が行き届かなくなるおそれがあります。また、株式会社は12年の間全く登記申請を行わないでいると、一定の手続きの後に会社を解散したものとみなされてしまいますので注意が必要です。

名前だけの取締役・監査役を置かないようにしたい。

これまで株式会社には取締役は3名以上、監査役は1名以上置かなければならなかったので、実際には会社経営にほとんど参加しない人でも役員として名を連ねて貰うといった状態も生じていました。会社法でも、会社に取締役会を置く場合は従前通り最低4人の役員を揃えなければなりません。

しかし、株式に譲渡制限を設けている会社では取締役会を置かないことができ、その場合は取締役は1名以上いればよいことになります。取締役1人だけの会社や、取締役だけで監査役は置かない会社といった、これまでの株式会社ではできなかった機関設計をする事も可能です。もう名前だけの役員を置いておく必要はなくなったといえるでしょう。

現在取締役会を置いている会社が、取締役1人だけの会社にしようとする場合は、株主総会で定款変更の決議をおこないます。その際、例えば株式譲渡の承認機関を取締役会から株主総会に変更する等、取締役会の廃止によって影響を受ける他の事項も併せて見直しをする必要があります。
登記についても同様に、取締役や監査役の退任による役員の変更登記のほか、取締役会や監査役設置会社である旨の規定を廃止する登記、そして株式の譲渡制限に関する規定の変更の登記についてもセットで行なわなければなりません。このような関連する手続きに遺漏のないよう詳しくは司法書士にご確認下さい。

株主の相続人は必ず株主になる?

今までは株主に相続が発生した場合に、相続によって株主となった者に対して、経営者が株主として会社に入ってきてほしくない、と思っていても拒否することができませんでした。 そこで、会社法では、譲渡制限会社であれば、定款で定めることにより、このような場合に、会社が株式を買い取ることができるようにしています(相続人等に対する株式売渡請求権)。

相続人等に対する株式売渡請求権を利用するには、以下12つの点に留意する必要があります。 まず、第1に、大株主である経営者が死亡した場合に、行使可能な議決権の逆転現象が起こる可能性があります。実は、相続による売渡請求をするには、株主総会の決議が必要となりますが、相続による売渡請求を受ける株式、すなわちこのケースでは経営者の持ち株については議決権がありません。
したがって、少数派の株主がこの制度を利用することにより、売渡請求を可決し、経営者の相続人が取得するべき株式を会社に買い取らせ、株主割合を逆転させて、会社の支配権を握ってしまうというリスクが考えられます。

第2に、買い取る際の財源は、配当可能利益の範囲内でしか認められていません。 要するに、相続人への売渡請求は、会社は配当等の分配可能額を超える買い取りはできない、つまり会社の体力を超えた高価買い取りはできないという規制があります。 詳しくはお近くの司法書士にご相談ください。

資本金を増やす方法は?

現物出資等の手続きが簡素化されました。商法では、現物出資については、資本の5分の1かつ500万円を超えない場合に限り、検査役の調査が不要でしたが、会社法では、この条件を「500万円」という金額の要件に一本化しました。 また、支払期が到来している金銭債権を、その債権額以下で出資して増資する場合には、金額が500万円を超えた場合でも、検査役の調査は不要となっています。
※税理士・公認会計士等専門家の証明を受けた場合の検査役の調査の省略要件の変更はありません。

募集株式の発行手続きが簡易になっています。(1)払込期日に代えて払込期間を定め、当該期間内に払い込みがされた場合には、その払い込みの日から株主となることが認められるようになっています。(2)払込取扱機関への金銭の払い込みがあることの証明については、発起設立のときと同様、通帳の写し等の方法によることが可能となりました。これによりコスト削減、よりスピーディーな増資ができます。詳しくはお近くの司法書士にご相談ください。

有限会社はどうしたらいいのですか?

有限会社制度は廃止されましたが、今までの有限会社は株式会社の一種として取り扱われます(特例有限会社)。特になにも手続きをしなくても、ほぼ今まで通りと同じに経営できます。有限会社のままでいれば、取締役、監査役の任期に制限がなく、決算の公告義務もなく、看板や判子を新しくする必要もありません。なお、新しく有限会社を設立することはできません。

有限会社も株式会社の一種となりましたので、有限会社のままでいる場合でも株式会社と同じように、社債や新株予約権を発行することができるようになりました。また、例えば出資持分が株式へ、社員総会が株主総会へ等の他、いろいろな変更が生じていますので、定款の修正、見直し等をすることが望ましいです。定款規定の内容については司法書士へご相談ください。

有限会社は株式会社になることができますか?

有限会社は、商号を「株式会社」に定款変更をすることで、株式会社となることができます。手続きは、定款変更の株主総会決議と、有限会社の解散登記、株式会社の設立登記です。なお、一度株式会社になると有限会社に戻ることはできません。

有限会社から株式会社へ移行する際には、商号の変更と併せて、目的の変更、役員の追加・変更、取締役会の設置、その他の定款規定や登記を変更することができます。定款の内容を見直すことで会社法による本来の株式会社の制度を盛り込むことができ、それぞれの会社に合った定款を作ることができます。どんな定款規定にしたらよいのか等は司法書士へご相談ください。

取締役会の決議の方法で変わった点がありますか?

定款に規定を設けることで、実際に取締役会を開かずに決議を成立させることができるようになりました。これまで、取締役会は直接意見交換をする必要があるとのことから、会議自体を省略することができませんでした。会社法では、取締役の全員が、書面又は電子メール等によって、その提案された決議の内容に同意し、監査役(業務監査権がある)の異議がない場合には、取締役会を開催せずに決議を成立させることができます。

決議の省略を導入することで、役員の移動等の経済的、時間的コストを削減することができます。ただし、代表取締役等が3ヶ月に1回以上行わなければならない取締役会への業務執行状況の報告は、実際に取締役会を開催しなければなりません。詳しくは司法書士へご相談ください。

株主総会の決議や報告の方法で変わった点がありますか?

実際に株主総会を開かずに決議や報告を成立させることができるようになりました。これまで、株主総会の開催自体を省略することはできませんでしたが、会社法では、議決権を行使できる株主の全員が、書面又は電子メール等によって、提案された決議の内容に同意した場合には、株主総会の決議を省略することができます。また、株主全員が、書面又は電子メール等によって、その通知された報告事項(決算報告等)について同意した場合には、株主総会への報告を省略することができます。

したがって、すべての株主総会の目的事項について、株主全員の同意が得られる場合は、実際に株主総会の開催をせずに決議や報告を成立させることができます。

決議等の省略を行うことによって、株主総会開催の経済的、時間的コストを削減することができ、実情に合った決定の方法がとれます。詳しくは司法書士へご相談ください。

合同会社(LLC)と有限責任事業組合(LLP)

(1)合同会社(LLC Limited Liability Company)
合同会社(LLC)とは、会社法で新しく導入された会社の形態です。 社員は株式会社と同様に「出資額を限度とする有限責任」のみを負う一方、内部規定については株式会社のような厳しい制約がなく、広く定款自治が認められていますので、組織や利益の配当などを自由に設計することが可能です。社員は一人でもOKです。

(2)有限責任事業組合(LLP Limited Liability Partnership)
有限責任事業組合(LLP)は、法人と組合の中間に位置する新しい組織の形態で、日本では、民法上の組合制度の特例として、2005年8月に創設されました。法人格を持たないにもかかわらず、民法上の任意組合と異なり、登記ができたり、代表者が印鑑登録できるのが特徴です。 合同会社(LLC)と同様、組合員は「出資額を限度とする有限責任」のみを負うことになります。合同会社(LLC)との相違点として、2名以上の個人または法人が「組合員」として必要であり、組合員全員が業務に携わる義務を負うこと等があげられています。

合同会社(LLC)は、同じ持分会社である合名会社・合資会社・株式会社との合併、株式会社への組織変更が可能です。法人であることから法人課税が適用され、出資者が配当を受けた場合には、利益に対する法人税と個人に対する配当にも課税されるため、いわゆる「二重課税」になると言われています。それに対して、有限責任事業組合(LLP)は、構成員課税(パススルー課税)を採用していますので、LLP事業から生じた損益は各構成員に直接課税され、損失が出た場合、構成員は各自の所得と損益通算できますので、小規模事業の場合には「節税になる」と言われています。

詳しくはお近くの司法書士にご相談下さい。